ヴィオニエの独り言 #幻
「さて、一緒に地獄へ落ちようか、ね?」
「ほら、いっぱい食え!」
「どうしてだい?僕、こんなに食べられないよ」
「食わねえからお前はそんな(腕を掴んで)細っこいんだ!」
「痛い……離してよ」
「離すさ。その代わり、食べろ。そんでもって、強くなれ」
「僕は君みたいに強くなんかなれないよ」
「お前はいつも出来ない、なれないばっかだな!やってみもしないくせに、なんで分かるんだよ」
「僕は、君と違って、白ブドウだから」
「誰がそんなの決めたんだよ」
「当たり前のことだよ」
「また決めつけだな!悔しくないのか?男は強くならないと、大事なもの守れないぞ!」
「僕にはそんなもの、ないから」
「これからできるかもしれないだろ。俺たちはまだ始まったばかりなんだ。強くなって、他のヴィティスの奴らなんか蹴落として、ワインのトップに立ってやるんだよ!」
「叶うといいね」
「お前もだ!お前も白ワインのトップに立つんだ!」
「だから、僕は……なんで、そんなに僕に執着するの。こんな弱くて取り柄もない僕に」
「他の奴らはいきがるだけでへなちょこだからな。その点、お前には見込みがある。早く強くなって、俺の相手をしろ」
「自分勝手だなあ……」
「俺が見込みがあるって言ってんだ。喜べ!」
「無茶苦茶だな……」
「何グズグズしてるんだよ、ヴィオニエ!!」
「む、無理だって……」
「強くなるんだろ!?その高さを飛べないんじゃ、強くなれねえぞ!!」
「僕は強くなるなんて一言も……」
「ほら!ここで受け止めてやるから!飛べよ!」
「……いくら君でも、僕を受け止めるなんて……」
「やってもないのにごちゃごちゃ言うな!ほら、来い!!」
「……わかったよ。失敗したら許さないからね……?(飛ぶ)」
「(受け止めようとし、肘が顎に当たる)ゴフッ」
「イタタ……ほら、無理だったろ」
「今のは俺の鍛錬が足りなかった。次は絶対受け止める」
「またこれするの……?(呆れ)」
ヴィオニエは昔を思い出し、瞼を伏せたまま、ふふっと笑う。
「僕がこんなに無茶をするのは、一体誰のせいなんだか。彼はわかっていないんだろうね」
さらりと風になびいた前髪の向こうに、あの男の背中を見つけて。
「あんなに俺に執着してたのに、綺麗さっぱり忘れてしまうなんて、本当ひどいよね。……俺は、大事なもの、守りたいもの、見つけたよ。君は……どうなんだい、シラー?」
届かない問いかけを、去っていく背中に投げかける。その隣に並ぶ、もう一つの背中。
「世話焼きなところは、変わってないよね」
あの男はワインのトップに立てなかった。代わりに、カベルネという男がリーダーともいうべき座に収まった。
まだ未熟な彼を支えたのは紛れもなく、あの男だった。
「まあ、まだ時間は無限にあるからね。シラーが頂点に立つ日がくるかもしれない」
1人でまた、くすりと笑うと、ヴィオニエは街の雑踏へ、歩き出した。
「どうしてだい?僕、こんなに食べられないよ」
「食わねえからお前はそんな(腕を掴んで)細っこいんだ!」
「痛い……離してよ」
「離すさ。その代わり、食べろ。そんでもって、強くなれ」
「僕は君みたいに強くなんかなれないよ」
「お前はいつも出来ない、なれないばっかだな!やってみもしないくせに、なんで分かるんだよ」
「僕は、君と違って、白ブドウだから」
「誰がそんなの決めたんだよ」
「当たり前のことだよ」
「また決めつけだな!悔しくないのか?男は強くならないと、大事なもの守れないぞ!」
「僕にはそんなもの、ないから」
「これからできるかもしれないだろ。俺たちはまだ始まったばかりなんだ。強くなって、他のヴィティスの奴らなんか蹴落として、ワインのトップに立ってやるんだよ!」
「叶うといいね」
「お前もだ!お前も白ワインのトップに立つんだ!」
「だから、僕は……なんで、そんなに僕に執着するの。こんな弱くて取り柄もない僕に」
「他の奴らはいきがるだけでへなちょこだからな。その点、お前には見込みがある。早く強くなって、俺の相手をしろ」
「自分勝手だなあ……」
「俺が見込みがあるって言ってんだ。喜べ!」
「無茶苦茶だな……」
「何グズグズしてるんだよ、ヴィオニエ!!」
「む、無理だって……」
「強くなるんだろ!?その高さを飛べないんじゃ、強くなれねえぞ!!」
「僕は強くなるなんて一言も……」
「ほら!ここで受け止めてやるから!飛べよ!」
「……いくら君でも、僕を受け止めるなんて……」
「やってもないのにごちゃごちゃ言うな!ほら、来い!!」
「……わかったよ。失敗したら許さないからね……?(飛ぶ)」
「(受け止めようとし、肘が顎に当たる)ゴフッ」
「イタタ……ほら、無理だったろ」
「今のは俺の鍛錬が足りなかった。次は絶対受け止める」
「またこれするの……?(呆れ)」
ヴィオニエは昔を思い出し、瞼を伏せたまま、ふふっと笑う。
「僕がこんなに無茶をするのは、一体誰のせいなんだか。彼はわかっていないんだろうね」
さらりと風になびいた前髪の向こうに、あの男の背中を見つけて。
「あんなに俺に執着してたのに、綺麗さっぱり忘れてしまうなんて、本当ひどいよね。……俺は、大事なもの、守りたいもの、見つけたよ。君は……どうなんだい、シラー?」
届かない問いかけを、去っていく背中に投げかける。その隣に並ぶ、もう一つの背中。
「世話焼きなところは、変わってないよね」
あの男はワインのトップに立てなかった。代わりに、カベルネという男がリーダーともいうべき座に収まった。
まだ未熟な彼を支えたのは紛れもなく、あの男だった。
「まあ、まだ時間は無限にあるからね。シラーが頂点に立つ日がくるかもしれない」
1人でまた、くすりと笑うと、ヴィオニエは街の雑踏へ、歩き出した。
「ふふ、俺にだって純白な時はあったんだよ?」
古い昔のことさ。
俺とシラーは、それなりに気の知れた間柄だった。
「いっぱい食わねえからそんな折れそうなんだよ。もっと食え」
なんてさ、俺の方にご飯を押しやるんだ。
白と赤とじゃ、力の差は全然違うのにね。
そんなボケたことを言って、よく俺を楽しませてくれた。
小さい頃のシラーは、本当にわんぱくで、そそっかしくて、面白かったんだ。
でも、あの日、離れ離れになってしまった。
俺たちが乗っている輸送船が、突然何者かに襲われたんだ。
俺は隠れようとしたんだけれど、突然後ろから掴まれて、簡単に連れていかれてしまった。
俺は泣きそうになって、シラーを見た。
あの時の顔は、今でも忘れない。
「ヴィオニエ」と叫ぶでもなく、走って追いかけるでもなく、
ただ、呆然と、目を見開いていて。
どうしたらいい、どうなっているんだって、混乱してて。
そんなの、俺に聞かないでよ。
それからは、俺は一人ぼっちだった。
見知らぬ地で、ワインを作って、作って、作って。
つまらなくなって、いじけることは何度もあった。
寂しくなって、色々遊びを覚えた。
だんだんと認められて、人もたくさん周りに集まってきて、
女の子ともいっぱい遊んだ。
でも、なんで虚しいのかな。
いつまでたっても、心の闇は埋まることがなかった。
それでも、まだどこかに、純白はあったんだ。
俺のアロマのような、白い花。
野原に咲いた白い花。
一本づつ、手折られていく。
俺の手で。
「綺麗だから、いけないって思いながらも、摘んじゃったよ」って、
女の子に渡すんだ。
小さな手の中に収まって、こうべを垂れる白い花。
まるで俺みたいな。
幾年か経って、俺も随分と大きくなって、あの街で、シラーと再会した。
通りにたむろする不良っぽい連中の会話で、「シラー」という名前を聞いて、俺はハッとして振り返った。
サングラスの男を見て、息を飲んだ。
ああ、やっと、これで……
つい柄にもなく嬉しくなって、
「シラー、久しぶりだね」と近付いて声をかける俺の目に、
誰だこいつって目で睨むシラーが映った。
ああ、ダメだった。
最後の花は、手折られた。
俺の名前を聞いて、シラーはようやく思い出したようだけど、昔みたいな楽しい会話はそこにはなくて、素っ気なく俺たちは別れた。
ずっと微笑んだままの俺の中身は、真っ黒だった。
でも、別れた後も笑顔は崩さなかった。
長い歴史の中で得た、一種の能力だ。
それからは、俺は、あることばかり考えていた。
またあの日みたいにって。
手に入れるなら、どんな手でも使うって。
でも、失敗だった。
色々手を尽くした。
散々やった挙句に、
俺を見た、シラーの顔。
ふかしていたタバコを、ぽとりと落として。
「お前、狂ってるぞ」
ああ、もう、そんなこと、知ってる。
知ってるさ………。
ルーサンヌとマルサンヌにずっと言ってきた言葉。
「俺の元から、いなくならないでね」
呪いみたいに、何度も、何度も、何度も、何度も。
二人の上に落とした。
まだ純白な二人は、決まって、「うん、絶対だよ」と頷いてくれる。
俺のことなんて、何も知らないから。
ねえ、カベルネ、その場所いつの間に盗ったの?
ねえ、グルナッシュ、それ以上寄らないでよ。
ねえ、ネロ、あいつにいくつ傷をつけたの?
ねえ
ねえ
ねえ
「俺の言うこと、聞けるよね?シラー」
古い昔のことさ。
俺とシラーは、それなりに気の知れた間柄だった。
「いっぱい食わねえからそんな折れそうなんだよ。もっと食え」
なんてさ、俺の方にご飯を押しやるんだ。
白と赤とじゃ、力の差は全然違うのにね。
そんなボケたことを言って、よく俺を楽しませてくれた。
小さい頃のシラーは、本当にわんぱくで、そそっかしくて、面白かったんだ。
でも、あの日、離れ離れになってしまった。
俺たちが乗っている輸送船が、突然何者かに襲われたんだ。
俺は隠れようとしたんだけれど、突然後ろから掴まれて、簡単に連れていかれてしまった。
俺は泣きそうになって、シラーを見た。
あの時の顔は、今でも忘れない。
「ヴィオニエ」と叫ぶでもなく、走って追いかけるでもなく、
ただ、呆然と、目を見開いていて。
どうしたらいい、どうなっているんだって、混乱してて。
そんなの、俺に聞かないでよ。
それからは、俺は一人ぼっちだった。
見知らぬ地で、ワインを作って、作って、作って。
つまらなくなって、いじけることは何度もあった。
寂しくなって、色々遊びを覚えた。
だんだんと認められて、人もたくさん周りに集まってきて、
女の子ともいっぱい遊んだ。
でも、なんで虚しいのかな。
いつまでたっても、心の闇は埋まることがなかった。
それでも、まだどこかに、純白はあったんだ。
俺のアロマのような、白い花。
野原に咲いた白い花。
一本づつ、手折られていく。
俺の手で。
「綺麗だから、いけないって思いながらも、摘んじゃったよ」って、
女の子に渡すんだ。
小さな手の中に収まって、こうべを垂れる白い花。
まるで俺みたいな。
幾年か経って、俺も随分と大きくなって、あの街で、シラーと再会した。
通りにたむろする不良っぽい連中の会話で、「シラー」という名前を聞いて、俺はハッとして振り返った。
サングラスの男を見て、息を飲んだ。
ああ、やっと、これで……
つい柄にもなく嬉しくなって、
「シラー、久しぶりだね」と近付いて声をかける俺の目に、
誰だこいつって目で睨むシラーが映った。
ああ、ダメだった。
最後の花は、手折られた。
俺の名前を聞いて、シラーはようやく思い出したようだけど、昔みたいな楽しい会話はそこにはなくて、素っ気なく俺たちは別れた。
ずっと微笑んだままの俺の中身は、真っ黒だった。
でも、別れた後も笑顔は崩さなかった。
長い歴史の中で得た、一種の能力だ。
それからは、俺は、あることばかり考えていた。
またあの日みたいにって。
手に入れるなら、どんな手でも使うって。
でも、失敗だった。
色々手を尽くした。
散々やった挙句に、
俺を見た、シラーの顔。
ふかしていたタバコを、ぽとりと落として。
「お前、狂ってるぞ」
ああ、もう、そんなこと、知ってる。
知ってるさ………。
ルーサンヌとマルサンヌにずっと言ってきた言葉。
「俺の元から、いなくならないでね」
呪いみたいに、何度も、何度も、何度も、何度も。
二人の上に落とした。
まだ純白な二人は、決まって、「うん、絶対だよ」と頷いてくれる。
俺のことなんて、何も知らないから。
ねえ、カベルネ、その場所いつの間に盗ったの?
ねえ、グルナッシュ、それ以上寄らないでよ。
ねえ、ネロ、あいつにいくつ傷をつけたの?
ねえ
ねえ
ねえ
「俺の言うこと、聞けるよね?シラー」
独りんぼエンヴィーを聴いてて急に思いついた独り言です。
ヴィオニエのイメージを壊したくない人は無視してくれて構いません。
シラーや他の人からすれば、シラーをうまく操作してる腹の見えないお兄さんなのですが、
ヴィオニエ視点でいうと、シラーと仲良くしたいだけっていう病み設定。
すみません、自分が病みが好きなだけです……。
一体、どんな弱みを掴んだんでしょうね、ヴィオニエは……。
ルー&マルに対しても、ただ優しいだけなのではなくて、再び一人になりたくないという彼の束縛心からだったんだと納得してます。勝手に。すみません。
ヴィオニエのイメージを壊したくない人は無視してくれて構いません。
シラーや他の人からすれば、シラーをうまく操作してる腹の見えないお兄さんなのですが、
ヴィオニエ視点でいうと、シラーと仲良くしたいだけっていう病み設定。
すみません、自分が病みが好きなだけです……。
一体、どんな弱みを掴んだんでしょうね、ヴィオニエは……。
ルー&マルに対しても、ただ優しいだけなのではなくて、再び一人になりたくないという彼の束縛心からだったんだと納得してます。勝手に。すみません。