シャンパーニュ ~冬編~
ムニエ「ほーら二人とも!おいでよ!」
雪のちらつくスケートリンクで、ムニエは後ろを振り返り、手招きする。
シャル「ムニエは元気だなあ」
ノアール「あの人、ちょっと子供っぽいところあるんだ」
シャル「ピノ・ノワールに対して、だろ?」
ノワールは特に言葉を返さず、ため息混じりにスケートリンクへ足を踏み出す。
追いかけてシャルドネも滑り始める。
ムニエはすでに中央までスイスイ滑っており、優雅にくるくる回ったり、楽しんでいるようだった。
遠巻きに見ていたカベルネとメルローも、その姿に見入っている。
シャル「ムニエ、上手いな……」
ノアール「ま、毎年来ていればそれなりに滑れるだろう」
シャル「そう言うお前はどうなんだよ」
ノアール「滑れないわけじゃない。ただあそこまではしゃげないだけだ」
シャル「ふっふ、ピノ様の優雅に滑ってる姿、俺見たいわあ」
ノアール「気が向いたらな」
シャル「おっ……」
ムニエ「ほーらほら、二人ともどうしたんだい? 氷上ではしゃべるより滑る!」
シャル「ほいほーい」
ムニエ「調子が悪そうなノアに、滑りが良くなるおまじないをかけてあげよう!」
ノアール「なに……」
ムニエ「ここに、ノアのちっちゃい頃の可愛い写真が入ったミニアルバムがある。これを今からあそこにいるカベルネたちに見せちゃおうかなーと思っている」
ノアール「なっ……」
ムニエ「(パラパラめくって)ふふふ……可愛いのからちょっと見せたくないようなものまで色々……」
カベルネの方へ滑り始めるムニエに、ノアールは手を伸ばす。
ノアール「ば、ばか、よせ……」
ムニエ「ちなみにシャルくんのもあるんだなー」
シャル「は!?」
アルバムを手にしたムニエを、ノアールが、遅れてシャルが追いかける。
ムニエ「あっはっはー。捕まえられるかなー」
カベルネ「お、おい、危ないだろ……」
メルロー「そうだね、ちょっとあれはよした方がいいね」
追いかけっこはやがてエスカレートしていく。他の客の間を滑り込むようにして、3人は追いかけっこを続ける。
カベルネが止めようとムニエの前に出るが、ムニエはそれをすいーとかわしてしまった。
ムニエ「ごめんねー、もう少し兄弟たちと遊びたいんだ」
カベルネ「やれやれ、だな」
カベルネは呆れて、見守ることにした。
メルロー「気をつけてよ、子供もいるんだからー」
ムニエ「ダ・コール」(了解)
そう言った矢先、子供がムニエの前に飛び出してきた。
避けようとしたが、運悪くその先に人が集中しており、上手くすり抜けることができず、スピードを落とした。
そこへ二人が飛び込んできた。
ノアール「ムニエッ……」
シャル「よし、捕まえ、た!」
勢い余って氷の上に倒れこむ3人。
二人を抱え込むようにして仰向けになったムニエは、やがて「ふふ、ふふふ……」と笑い出す。
ムニエ「あーあ、私の負けだよ。カベルネたちには見せない」
シャル「ちょっと、それ」
手を伸ばすシャルドネの手をかわし、ムニエはアルバムにキスをする。
ムニエ「君たちにもあげないよ。だってこれは、私の宝物なんだから、ね」
そうして、再び二人をぎゅっと抱きしめる。
ムニエ「愛してるよー、二人とも。大事な、大事な、宝石だ」
ノアール「せめて、中の写真の確認を……」
ムニエ「だーめ。見せたら絶対破るかされそうだし」
シャル「ま、するだろうな」
ノアール「くっ……」
シャル「はあ……ムニエにはかなわねーなあ」
ムニエ「私も君たちには参っているよ。(またぎゅっとして)幸せだなー、もうちょっとこうしていたいな……」
ノアール「いや、流石に周りの邪魔になるし、そろそろ手が冷たい……」
うんざりしている中に、少し気恥ずかしさを見えかくれさせているノアールの頭にムニエはポンと手を置き、2回撫でて、ようやく身を起こす。(アルバムは取られまいとさっとポケットに隠した)
ムニエ「よし、じゃあ、準備運動を終えたことだし、みんなで仲良く滑ろっか!」
顔いっぱい幸せそうに笑うムニエに、二人は頷くしかなかった。
↓以下落書き。いつか清書するね。