シネレアとリースリング
シネレアが出てくるってことは腐ってます。苦手な方はごめんね。
あと、よくわかんないことペラペラ喋ってますが、雰囲気として軽く流してください!
出会いの話です。色々と捏造です。
あと、よくわかんないことペラペラ喋ってますが、雰囲気として軽く流してください!
出会いの話です。色々と捏造です。
シネレア「グフフフフ……俺はボトゥリティスシネレア。ぶどうを腐らせるのがだーいすきなカビ菌だぜ!」
シネレア「あちこちでヴィティスのやつをとっ捕まえては、気の向くままに腐らせていたら、とうとうある日、捕まっちまった……」
シネレア「ドイツの奴ら、甘っちょろい連中だと舐めてかかってたら、一匹つよーい奴が混じっていてよお……なんか閃光が走ったなーと思ったら、気がついた時にはもう檻の中。流石の俺ちんも、悔しい通り越して笑っちまったよん」
シネレア「一通り笑ったら、今度はこの俺ちんを捕まえた野郎の顔が見てみたいと思った。ふわふわしてすばしっこいこの俺が、まさか捕まる日が来るなんて、思ってもいなかったもんなあ。屈強な男か、それとも嫌らしい顔をした策士か。どちらでもいい、俺はそいつにものすごく興味が湧いていた」
リース「何を笑ってたんすか。気味が悪い」
シネレア「あれこれ考えていた時、すうっと牢の前に現れたのは、目元の冷ややかな、短髪の美人ちゃんだった」
シネレア「あ……?」
リース「あんたのことっすよ、シネレア」
シネレア「そいつはとても細くて、色素も薄くて、まるで氷細工のように繊細だった。かと思えば物腰は柔らかく、仕草も上品で、なんでこいつが軍服なんか着ているんだというくらい、この牢獄には似合わない存在だった。ただ1つ言えるのは、お顔が俺の好みだってことだ」
シネレア「あー……」
リース「都市の連中が手を焼いているカビ菌がいると聞いて、どんな悪鬼なのかと身構えていたら、大したこともないですね。ちょっとがっかりっす」
シネレア「あ?」
リース「ま、そこでおとなしくしてることっすね。その内、あんたの罪状が決まり次第、別のとこへ護送されます。それまで反省でもしててください」
シネレア「う……」
シネレア「俺は何か恨み言でも言い返してやりたかったが、俺たちカビ菌はヴィティスの言葉を話さない。喋ろうとしてもうめき声のようなものが漏れるだけだ。今まではそれで十分だったが、この時、俺は何かしらをこの美人ちゃんに言い返してやりたかった」
シネレア「う!ああ!」
リース「何か言いたげっすね。なんです?聞くだけならしてあげますよ」
シネレア「ああ!!」
リース「……ああ、ヴィティスの言葉を解さないんでしたね」
シネレア「うう……」
リース「でも、俺に何か言いたんでしょ。いいっすよ、解るまで付き合ってあげます」
シネレア「あ?」
リース「勘違いしないでくださいっすね。これも業務のうちなんで」
シネレア「あー……」
リース「ん」
シネレア「……おかしなやつだ。大抵のやつは、俺の正体を知ったら警戒するというのに。鉄格子を挟んでいるからか、相手には余裕を感じる。……多分、俺を一発で仕留めたのも、この美人ちゃんなんだろう。面白い、ますます相手に興味が湧いてきた」
リース「……まさか、冤罪だとは言わねっすよね?あんたの悪虐非道はあちこちで報告が上がってるんで。今更言い逃れはできねえっすよ」
シネレア「んあ」
リース「……罪は認めているようっすね。ってか、開き直ってないっすか?牢に入れるだけじゃ、反省なんてしねえっすか?」
シネレア「う」
リース「なんでそこで肯定するんすか。じゃあ、一生この中で捕らわれたままでいいってことっすね?」
シネレア「いあー!」
リース「じゃあ、反省してください。もうやらないっていうのなら、考えてやってもいいと言ってるんすよ?あんたは他のカビ連中と違って多少知性があるみたいっすから」
シネレア「うー……」
リース「俺のいうこと、解るっすか?俺は、あんたには改心の余地があると見込んで、こう言ってるんです。他の奴らだったら、意思疎通もできないんで、即、対病害用の農薬を散布して終了っす。でも、あんたは他とは違う。俺の話も理解しようとしてる。だから、もう一切ヴィティス達に手を出さないようなら、釈放してやってもいいと言ってるんです」
シネレア「なんで、こいつがそんな提案をするのか、俺にはわからなかった。後から知った話だと、どの害敵に対しても、改心の余地があるのなら釈放するという方針をとっていたようだ。だが、その時の俺には、この美人ちゃんが俺に親切をかけているように聞こえた」
シネレア「んあ」
リース「なんすか?」
シネレア「うー」
シネレア「もどかしい。言葉が通じないのが、自分を苛立たせる。くそ、言いたいことがあるのに、伝わらないなんて……!」
シネレア「う、うぉ、うぉ、う、うあ、うぉ、うぉ、い、えー、え」
リース「……何か、言いたいんすね」
シネレア「ぐ、ぐお、ご、ぐ、うあ、うお、お、ぎ、え、いえ」
シネレア「あー、くそ、こんなことならヴィティスの言葉を習得しておけばよかった!俺ちん今、人生初めて後悔してる!!」
リース「……まだ、時間もあることだし、言葉、教えてやりましょうか」
シネレア「!」
リース「何か、伝えたいんでしょ。俺に」
シネレア「い、いっあー!!」
リース「な、なんでそんな嬉しそうなんすか。い、意味わかんねえし……」
シネレア「なんだかんだで、俺は美人ちゃんから言葉を教えてもらえることになった。やったぜ!」
***
シネレア「正直言って、美人ちゃんの教育方針はめちゃくちゃスパルタだった。ちょっと間違えるとすぐ怒鳴るし、すぐ手が出るし。でも、俺は何故か、そんなことも気にならず、美人ちゃんと喋れるだけで、ほんわかしていた。美人ちゃんはツンケンしながら、仕草行動がどれも可愛く見えて、別の意味でもどかしかった。俺がちゃんと答えた時には、はっきりとは出さないけれど、嬉しそうにしてるし。なんだろうなぁこれ。俺、人生初の恋とかしてんのかなー」
リースは、普通に格子蹴ったりとかする。
***
リース「シネレア。guten Morgen」
シネレア「グーテモルゲー」
リース「ふ、まだ下手くそとはいえ、はじめに比べて随分とマシになってきましたね」
シネレア「ふっふっふ、ほめた」
リース「別、褒めたわけじゃねえし。自惚れんなし」
シネレア「ふっふ、りーす、かわい」
リース「な、俺の名前、なんで知って……」
シネレア「きいた、ちがう、やつ」
リース「誰から」
シネレア「それ、きいてない」
リース「ふーん、そうっすか。……あと、俺は別に可愛くねえし。お前らカビ菌には俺みたいのが可愛く見えるんすか?」
シネレア「ヤー。おれは、かわいいリース」
リース「文法違う。あんたが俺で可愛いわけじゃないだろ」
シネレア「おれ、リースは、かわいい」
リース「そう、……いや違う、俺は可愛くない」
シネレア「ぶっふふふふふ」
リース「変な笑い方するなし!」
***
シネレア「こんな風に、リースの反応はいちいち面白い。ああ、もう大好きだ。時々、食べてしまいたくなる。……いや、だめだ、食べないって決めたんだ、俺は。ちゃんと言葉を交わして、言いたいことを伝えて……て、俺の言いたいことって、なんだったっけ。何を、こいつに伝えようとしてたんだっけ……」
***
リース「おい、起きろし、シネレア」
シネレア「うーん……おはよう、リースちゃん」
シネレア「俺が目をさますと、目の前にリースの細い、だが鋼のように強い脚があった」
リース「だから、ちゃん付けんなって言っただろうがバカ」
シネレア「リースたん」
リース「却下」
シネレア「リースさま」
リース「普通にしろし」
シネレア「リース」
リース「そう、それでいいっす」
シネレア「んで、リース、中へ入ってきて何?」
リース「ん、ああ。……あんたの移動が決まったっす。俺の監視からも離れる。これからあんたは、別の場所へ護送される。……よかったっすね。口うるさい奴と離れられて」
シネレア「え、いどう、って、俺どこか行く?」
リース「そういうことっす」
シネレア「え、俺、リースと離れたくない」
リース「は?ふざけたこと言うのも大概にしろし。移動っつっても、別にあんたを消滅させるわけじゃない。サンプルをとったり、さらに詳しく調査して、対シネレア用の対策を作るんです」
シネレア「なにそれ嫌だ」
リース「あんたがむちゃくちゃやりたい放題してたからっすよ!……大人しくしてるってんなら、監視付きで出してやってもいいっすけど、でも、もう決まったことなんで」
シネレア「俺、大人しくしてる。むちゃくちゃしない。だから、リースと、一緒に、いたい」
リース「いや、釈放の話であって、俺とどうこうって話じゃ」
シネレア「俺、リースが、好き。だから、一緒にいたい」
リース「……は」
シネレア「リースは、一瞬驚いたような顔をして、それから嘲るような目で笑った」
リース「そうやって、俺に取り入れれば、今までのことが許されると?俺がそう簡単にあんたを許すとでも思ったっすか?」
シネレア「違う、そうじゃない」
リース「俺を甘く見ないでください。あんたのことは、改心の余地があると思って、言葉を教えてやったり、話をしたりしてたんっす。大人しくしてたら出すっつーのも、ずっと俺たちの監視下のもと、暮らして行かなきゃいけないってことっすよ。俺に取り入れば、優しくしてくれるとか、そんな考えしてんなら、痛い目見るっすよ」
シネレア「俺は……リース、そうじゃない、俺は、俺が言葉を覚えてまで、リースに伝えたいのは、」
シネレア「おれは、リースにゆっくりと近づいた。警戒されないように。地雷地を慎重に歩くように。リースは僅かに背後へのいたが、逃げることはしなかった」
シネレア「他の奴には、手を出さない。約束する。代わりに、リースと、一緒にいたい」
リース「……それは」
シネレア「ヴィティスでは、なんて言う?俺は知らない。俺は、この伝え方しか知らない。……触ってもいい?」
リース「だめだ」
シネレア「リース」
リース「だめだ」
シネレア「頑として拒むリース。でも、俺の手の届く位置から逃げようとしない。まるで、蛇に睨まれた蛙のように、立ちすくんでいる。触ろうと思えば、俺はリースに触れられた」
シネレア「口だけ、でも」
リース「だめだ」
シネレア「じゃあ、首」
リース「だめだ」
シネレア「じゃあ、手」
リース「だめだっつって……」
シネレア「じゃあ、逃げろよ」
リース「……!」
シネレア「俺は、動こうとしない、口ばかり拒むリースの口を塞いだ。もう、だめだ、と言う言葉を、言わせないため」
リース「ん……あ……シネ、レア」
シネレア「リースは、俺の思っていた以上に、官能的な顔で、俺の舌を受け入れていた。その吐息が、胃もたれしそうなほど甘くて、俺は我を忘れてリースに夢中になっていた」
リース「ん……も、やめろし。これ以上、やるな。もう、やめろ」
シネレア「あんなに上から目線で、頑なで、足は出るわ、暴言吐くわだったリースが、今は俺の腕の中で震えている。格子越しでしか会話していなかった相手が、手の内にいる。……俺は、それ以上をすることしか、頭になかった」
シネレア「リース、好きだから」
リース「本当に、やめろ。俺のやっていたことも、無駄になるから、これ以上は、するな!」
シネレア「え、」
リース「あんた、アホか!?今ここで俺を襲えば、また初めに戻るんすよ!!結局改心の余地なしの烙印を押され、最悪、一生ここから出られなくなるんすよ。わかってんですか!!」
シネレア「リースと一緒にいられるならそれでも」
リース「マジでアホっすね、あんた!!これがバレたら、俺どころか、誰とも会話できないところに閉じ込められるっすよ!あんたにはまだ、意思疎通ができる、共存することができる、そう見込んで俺は、あんたを外に出せるよう、色々やってたんすよ!なのに、今ここでふいにして、どーするんすか!!」
シネレア「リース……」
リース「ああ、もう、こういうのが嫌だったんで、厳しく接していたってのに、なんで、こうなるんすか……」
シネレア「リースは、優しいし、可愛い」
リース「うるせえ。もう、喋んなし」
シネレア「そのまま、足元に崩れ落ちるリースには、初めて出会った時のような威勢の良さや孤高さはどこにもなかった。強いて言えば、溶けかけた氷細工の儚さ。これが、もう1つの、リースなんだ」
シネレア「リース」
リース「喋んなし」
シネレア「俺、言ってなかったけど、今はこんな姿してるけど結局はカビだから、こういう鉄格子で閉じ込めても、風がある限り、何処へでもいけるよ」
リース「……は」
シネレア「細い隙間からも、外に出られるし。昨日、こっそり厨房に忍び込んだのも俺だし」
リース「は!?あれ全部食ったの、あんたか!?」
シネレア「だって、腹減ってたんだもーん」
リース「は……なんすか。ああ、もう、呆れて何も出てこないっす」
シネレア「だから、誰も俺のこと閉じ込められないし、俺はどこへでも現れるし、なんでもできる。ただ1つ、俺を閉じ込めて置けるのは、リースだけ、だよ」
リース「……」
シネレア「リースが、大人しくしろっていうなら、そうする。代わりに、俺を、リースのそばに閉じ込めておいて。浮気しないように」
リース「あんた、アホなんじゃないっすか。ってか、アホっすね」
シネレア「うん、なんでもいいよ。リースの好きに呼んで」
リース「この、アホカビ菌……」
***
シネレア「そんなこんなで、俺たちは現在、超ラブラブってわけ!」
リース「おい、どこがラブラブっすか、この腐れ菌」
シネレア「ウッフッフ〜。リースちゃんの罵倒は全て俺への愛だと、わかってんだからー」
リース「はあ……この阿呆は、腐らせるばかりか自分の脳みそも腐らせているみたいっすね」
シネレア「まあねー。俺は腐らせるのが何よりも大好きなカビルンルンだからな!」
リース「そこ、開き直るところじゃねえし……」